ノリックが全日本の500ccクラスにデビューした時
鈴鹿の開幕戦、土曜日の予選の時。
デグナー、一つ目。
その日はひどく寒くて、ギャラリーも居ないし、
プレスカメラマンもひとりもいなくて、
そこに居たのは俺たち「5,6人」のコースオフィシャルだけ。
前の年に関東選手権で、物凄く速い奴がいて
そいつがブルーフォックスレーシングから全日本で
500ccに乗るっていうのは、クシタニのレースサポートを
していた秋田さんから噂で聞いていて
「お父さんは川口オートの阿部光雄」って聞いた時は
少しビックリした思いがある。
高校の時、よく学校サボって川口オートに行ってたので
・・・
デグナー、一つ目を全開で飛び込んできた、ノリック。
かなりのオーバースピードで案の定、リアが少し滑ってる・・・
大抵のライダーはここでアクセルスロットルを戻し
急激なエンジンブレーキみたいな状態になり
(俗にいう、ハイサイド)でいきなりリアタイヤのグリップが回復して
その結果、マシンが大きくブレ、間違いなく転倒するんだけど・・・
ノリックは激しくブレた、マシンのシートカウルから
お尻を少し浮かせて、絶妙のバランス感覚で
マシンを立て直し、何もなかったように
デグナー、二つ目をクリアーして、立体交差下に
消えていった・・・
それを見ていた俺たち全員、
「スゲー!!」
「あんな奴、今まで日本じゃ見たことない!!」
今でもこんなに鮮明に覚えてるんだから
よっぽど凄かったんだと思う。
アレをリアルに見たのは「世界で俺たちだけ」
その後のノリックの活躍はモーターバイクレースが
好きな人には承知のとおり・・・
ヤマハに移籍して、自分もヤマハの選手と仕事する
ことがあって、彼と何度か話す事があったけど
なんだか普段はすごくのんびりした感じで
レース中のアグレッシブなイメージはありませんでした。
32歳。
早すぎます・・・
阿部典史さんのご冥福を、心よりお祈りいたします。
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